カラーコレクションとカラーグレーディングは、しばしば混同されがちですが、その目的は異なります。
「 カラーコレクションで色を補正、統一感を出し、カラーグレーディングでスタイルを追加する 」とイメージすると分かりやすいかと思います。
なので、作業の順番としてはカラーコレクション → カラーグレーディングです。
業界ではよくカラコレ、カラグレと呼ばれます。
本記事では、映像編集におけるカラーコレクションとカラーグレーディングについて解説します。(以下、カラーコレクション=カラコレ、カラーグレーディング=カラグレと表記。)
カラコレの目的を理解する
カラーコレクションの目的は、映像のスタイル化ではなく、実際の色を忠実に再現することにあります。
バランスの良い自然な色合いを実現することが求められます。
色相(しきそう)、彩度(さいど)、明度(めいど)等の色の属性を慎重に見極め、適切な色を組み合わせます。
カラコレは、映像の印象を大きく左右し、見づらい映像を明るく調整したり、重要なシーンを強調したりと、映像編集において欠かせない編集作業です。
カラコレの目的は、主に以下の通り。
ブランド・製品・商品イメージの構築
適切な色の組み合わせを選ぶことで、ブランド・製品・商品のイメージを強化し、視覚的に良い印象を与えることができます。
コンセプトの視覚的表現
特定のテーマやコンセプトに沿った色のパレットを作ることで、デザインやコンテンツのコンセプトを視覚的に表現することができます。
視覚的な調和と統一感
カラコレで選択された色の組み合わせは、視覚的な調和と統一感を生み出し、映像全体のバランスを整えます。
カラコレの基本の流れを理解する
テーマ・コンセプトの決定
カラコレでは、映像のテーマやコンセプトを明確に定めることが重要です。
そのうえで、そのテーマに合わせた具体的なイメージや伝えたいメッセージ、喚起したい感情をイメージし、適切な色彩を選びます。
例えば、パワフルなイメージを伝えたい場合は、赤や橙などの暖色系、落ち着きと清潔感のあるイメージを出したい場合は、青や緑などの寒色系の色を選ぶといった具合に。
色相(しきそう)の選定
色相は色の種類やカテゴリーを表し、赤、青、黄などの基本色を指します。
テーマやコンセプトに合わせてベストな色相を選定し、調和のとれたカラーパレットを構築することが重要です。
彩度(さいど)の調整
彩度は色の鮮やかさや濃さの度合いを指します。
デザインの目的に応じて、彩度を適切に調整することで、色彩の表現を大きく変化させることができます。
特に広告などでは彩度の扱いが重要なポイントです。
例えば、色あせて物足りなく映るイメージを、高彩度の鮮やかな色調に編集することで、新鮮な印象を与えられます。
一方で、落ち着いた雰囲気を出したい場合は、低彩度のくすんだ色調を採用するなど、用途に合わせた彩度調整が求められます。
このように彩度の調整によって、色の持つ雰囲気や世界観が大きく変わってきます。
テーマに合わせたベストな彩度バランスを見極め、的確に調整するスキルが求められます。
明度(めいど)のバランス
明度は色の明るさや暗さの度合いを指します。
全体の調和を保つためには、明度のバランスを適切に保つことが大切です。
明暗バランスやカラーバランス全体がイメージ通りでない場合は、明度を調整することで改善を図ります。
例えば、全体が暗くくすんだ印象になっている映像は、明度を上げることで明るく開放的な雰囲気になります。
逆に明るすぎて作品の世界観にそぐわない場合は、明度を下げて落ち着いた印象に調整するといった具合です。
また、一部の被写体のみ、明度を変える等の局所的な調整も可能です。
主役の存在感を際立たせるため周囲を落ち着いた明度に、被写体のみ明度を上げるなどの使い分けができます。
映像の場面展開に合わせた的確な明度バランスが何より大切なのです。
対照色を取り入れる
対照色をうまく使うことで、デザインにダイナミックさや視覚的なアクセントを与えることができます。
対照色とは、色相環(しきそうかん)上で120〜150度の色相差がある色の組み合わせを指します。
補色(反対色)を取り入れる
補色とは、色相環(しきそうかん)上で互いに180度反対側に位置する色の組み合わせを指します。
赤と緑、青とオレンジ、黄と紫がその典型例。
補色は色相差が大きいので、ダイナミックでカジュアルな印象を与えることができます。
カラーマッチング(色合わせ)
カラコレの色彩が、相互に調和しているか、統一感があるかを確認する作業です。
実際に色を配置して組み合わせてみて、全体的なバランス・デザインをチェックします。
ストーリーの世界観に統一性を持たせ、視聴者に臨場感を与える上で、色の均一化は極めて重要な工程です。
丁寧なカラコレ作業を通じ、色彩の力を最大限に活かした魅力的な映像作品が生み出されます。
カラグレの目的
カラーグレーディングの目的は、映像全体の色に特定のスタイルを加えることにあります。
カラグレにより、映像作品に独特の視覚的な雰囲気が生まれ、視聴者に深い印象や感情を伝えられます。
カラグレ前のカラコレが重要です。
カラグレで仕上げる(最終工程)
カラコレで選定した色彩のアイデアを活かしながら、カラグレすることで、映像にユニークな表現を与えることができます。
例えば、ビンテージ調や冷たい色調、映画のようなフィルムルック、コントラスト等の効果を映像全体に加えるといった具体に。
こうした一括処理により、クリップ間の色彩の違いを統一し、作品全体に完成された一貫したビジュアル表現を与えられるのです。
ストーリー性の高い映像はもちろん、企業PRやプロモーション映像などにも、独自の色調表現を取り入れることで強いインパクトを与えられます。
カラコレで選んだ色使いを基調としつつ、カラーグレーディングで最終的な色調や質感を決定する。
この2つの作業フェーズを的確に行うことで、質の高い魅力的な映像作品が作り上げられるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本記事では、カラコレとカラグレの目的、各編集フェーズごとの違いを一通り理解できれば良いかと思います。
知っているのと、知っていないとでは大きな違いです。
プロジェクトにおいて編集作業に関わらない場合も、基本的な作業工程を理解しておくことで、ディレクションがしやすくなります。